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2007/06/17

ステレオ歴史探訪(15) 辰野金吾設計旧百三十銀行八幡支店

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ステレオ写真(平行法)

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私が通勤に使っているJR八幡駅が建て替えのため取り壊された。
取り立てて特徴のない建物だったが、かつては駅の2階に自然史博物館があったそうなので、思い入れのある人もいるに違いない。
この数年の八幡駅前から東田周辺の開発には目ざましいものがあり、かつての八幡製鐵所城下町からすっかり姿を変えているが、来年末に地上5階建の新駅舎が完成すれば、この辺りの開発も一段落というところだ。

そんな移り行く風景の中、駅から国道沿いを5分ほど歩いたところに残る一見レンガ造り風のこの鉄筋コンクリートの建物は、大正4年(1915)に建築された旧百三十銀行八幡支店。
設計には唐津出身で東京駅を設計した明治・大正期の建築家辰野金吾(1854-1919)が関わっていて、赤煉瓦に白い石で窓や入り口周囲を飾る「辰野式」の特徴が残っている。
元々石炭や鉄、それらを運ぶ鉄道の資金の調達などを目的に大銀行の支店として作られたが、歴史の波を受けて持ち主が転々とし、現在は旧百三十銀行ギャラリーとして生まれ変わっている。

ところで、東京駅といえば、つい最近、空襲で焼失した三階ドーム部分を復元する工事が始まったそうだが、それを設計した辰野金吾もきっと喜んでいることだろう。
参考:「JR東日本 東京駅丸の内駅舎保存・復原工事の着工について」(PDF)
しかし一方で復元には反対する意見もあるようで、それは一つには空襲の記念碑的建築が失われることであり、また多くの人にとっては今の三角屋根の駅舎こそが心に思い浮かぶ東京駅の姿であるからだ。
たしかに、頭にドームを乗せた東京駅の復元完成予想図は、自分の持つイメージとの食い違いに多少戸惑ってしまう。

ではいったい、歴史の移り変わりの中で、どの時点の姿を残し、何を新しくするのか。
そしてそれを、誰が、どういう基準で決めるべきなのか。
例えば日本最古の立体交差駅であるJR折尾駅は、現在進行中の整備事業で鉄道が連続立体化され立体交差駅ではなくなることが決まっているが、その結果現在の駅舎と周辺に残っている煉瓦橋梁をどうするのかは未解決である。
個人的には雰囲気のある木造の駅舎や煉瓦アーチの連絡通路を残して欲しいところだが、木造の駅舎自体もすでに建設当初の姿ではなく、歴史的価値がどれほどのものか分からないし、実際の駅の利用者や地域に住む人たちにはまた別の思いもあることだろう。

最近、水戸岡鋭治のデザイン画集が出たので手に入れた。
近年のJR九州の車両から駅舎、職員の制服に至るまで総合的にデザインを手がけ、その斬新なデザインが国内外で評価されているが、徐々に日常のシーンにも浸透して、九州の新しい風景として定着してきている。
画集は、それらの仕事に使われたイラストとともに、九州の観光地の美しいイラストなども加えられたものだが、その47ページには、2004年に氏がリニューアルデザインを手がけた肥薩線隼人駅のデザイン画があり、その上に、百年前に建てられた嘉例川駅の木造の古い駅舎が、まるで敬われるかのように描かれている。
最新の九州新幹線800系つばめにも、和のテイストや地域の素材を取り入れた水戸岡鋭治が、もし折尾駅のリニューアルをデザインするとしたら、何とか上手くやってくれそうな気もするのだが。


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コメント

北九州ってどこに行っても歴史的建造物が多いですよね。
反面、このような建物が解体されているケースもあり、
寂しい限りです。

で、折尾駅はどうなるんでしょうね。客の利便性ばかり
に目を向けるんじゃなく、住民の意見等を良く聞いて、
最良の方法を模索して欲しいと思っています。

投稿: wanwanmaru | 2007/06/18 13:01

>wanwanmaruさん
歴史的に貴重だから保存されてるものもあれば、時代に取り残されてしまったものもありますが、後者も捨てがたい。
残すべき価値って、誰がどうやって決めればいいのか難しいですよね。
有名な建築家の設計だったら残さなければならないというわけでもないでしょうし、発展のためには過去を消すことも必要なわけで。

折尾駅。
利便性のために、どこにでもあるようなつまらない駅にはならないでほしいですよね。
少なくとも今は、他のどこにもない折尾駅なのですから。

投稿: 二つ目草 | 2007/06/19 00:33

辰野金吾、村野藤吾、磯崎新、九州に縁のある建築家が多いですね。
中でも北九州には彼らの作品が集積している土地柄、もっと
建築に注目した街づくりはできる素地があると思います。

折尾駅、風のうわさで「保存」の可能性が出てきたようなことを聞きました。
本当ならよいですが・・・
残すなら、立体交差も残しながら、バリアフリー、各方面への共通アクセスなど、現在の駅舎を利用しながら出来る方法があります。
むしろ、残さないといけないような配置になるはずだと思います。
色々なアイデアが浮かぶので、計画チームに入れてもらえないかなーと
ひそかに思っています。水戸岡さんほどのデザイン力はありませんが…(^o^ゞ

投稿: 赤か毛 | 2007/06/20 00:00

>赤か毛さん
北九州は図書館や市民会館などの公共の建物に、著名な建築家によって設計されたものが多いですね。
その他にも歴史的に重要な近代化遺産が沢山残っています。
それをほとんどの市民は知らずに過ごしていますが、じつは町全体が建築博物館みたいなものですよね。
長崎さるく博のような「まち歩き博覧会」として、こういった遺産を歩きながら学べるようにして欲しいです。

折尾駅保存、それは何とも嬉しい風のうわさですね。
折尾駅は、今残っている素材をうまく使えば、駅だけでも楽しめる場所だと思いますし、交通の要所としての機能も高められそうですね。
いろいろな意見を交わして、いい形で生まれ変わって欲しいですが、地元出身である赤か毛さんのアイデアもぜひ生かされることを願っています。

投稿: 二つ目草 | 2007/06/20 01:15

 八幡駅改築されるんですね。2F~5Fは何に使うんでしょ?
 八幡特に東区の駅前は戦災の教訓から分離帯のある幅広い道路や駅前の鉄筋コンクリート作りのアパートが当時の八幡市主導で整備されたそうです。
 
 八幡駅から眺める皿倉山は「正面」って感じで大好きです。

投稿: himajiji | 2007/06/21 01:54

>himajijiさん
1階は店舗が入り、2~5階は立体駐車場になるようですね。

八幡駅正面の国際通りは、実際交通量はさほど多くありませんが、片側3車線に広い中央分離帯、花壇や彫刻に飾られたロータリー、立派なケヤキ並木、背景に皿倉山と、かなり贅沢な通りで、とくに今の時期は花は美しく、木陰は涼しく、歩くのが心地よいです。
駅前には複合商業施設の上にマンションを持つ高層ビルが建ちましたが、その前にあったビルがhimajijiさんの言われるアパートですね。
4棟あったビルのうち最後まで残っていたビルは村野藤吾の設計だったそうです。
村野作品は、この国際通りだけでも、旧八幡信用金庫(現福岡ひびき信用金庫)、北九州市立八幡図書館、八幡市民会館がまだ残っています。
一方で、響ホールのように近代的な美しい建築もあって、通りのそこここに文化的な香りが漂っていますね。
国際村交流センターや九州国際センターに通うアジアやアフリカの人たちにもよくすれ違い、名実ともに「国際通り」となっています。

投稿: 二つ目草 | 2007/06/21 21:29

 市立八幡図書館。南向きの窓から四季を感じながら本を読んだり、選んだり。子供の頃は単なる遊び場で夏になると市民会館側の土手は歩くたびに足許から跳んで逃げるバッタで一杯でした。そのあと2Fで週間マンガを読んで帰ってました。
 その市民会館側から木々の向うに見える図書館は緑とレンガ色で美しい。

投稿: himajiji | 2007/06/22 23:24

>himajijiさん
では、少年時代の思い出の場所だったのですね。
それは私なんかより何倍も思い入れがあることでしょう。
ここに見られる村野作品は、昭和を感じさせる、壁面が多くてちょっと重厚な建物ですが、豊富な木々の緑とはマッチしていますね。
近くは何度も通いながら、まだ一度も利用したことがないので、今度寄ってみようかな。

投稿: 二つ目草 | 2007/06/23 00:18

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