国宝 鑑真和上坐像
日曜日、福岡市博物館に「国宝鑑真和上と唐招提寺展」を観に行きました。
主役は国宝鑑真和上坐像。
鑑真は唐の著名な高僧でしたが、日本から来た遣唐使からの「正式な僧となるのに必要な儀式ができる指導者を連れて帰りたい」という要請に自ら応えて日本に渡ることを決意。
日本行きを惜しむ弟子からの妨害や悪天候などにより5度も失敗し、ついに失明もしてしまいますが、10年以上経った6度目にようやく日本にたどり着きました。
沖縄、屋久島、鹿児島、太宰府、そして大仏ができたばかりの奈良東大寺に迎えられ、僧として守るべき道徳を教え、正式な僧を養成する制度の確立に尽力します。
それだけでなく、同行した専門家により、唐の美術や建築なども伝えられました。
「座死することを願う」との遺言どおり座禅の姿のまま唐招提寺で亡くなった鑑真。
その姿を残そうと、弟子たちの手により作られたのが、この鑑真和上坐像なのです。
ですから、形式的な仏像などとは違い、写実的に作られています。
そして、木彫ではなく「脱活乾漆法」という方法で作られていることも、千三百年もの間、姿を保っている秘密なのだそうです。
粘土で作った塑像の上に薄い麻布を漆で重ね貼りして形を作り、最後に内部の粘土を掻き出しているので、軽くて丈夫な張子のような構造になっているのです。
丈夫な繊維を樹脂で固めた、今でいうなら繊維強化プラスチック(FRP)のような技術です。
命がけでやって来た鑑真。
そして、その師を思う身近な弟子によって写された生々しい存在感を、間近にじっくり味わうことができました。
展示期間が9月2日までで、これからますます混雑が予想されます。
開場前には博物館に到着し、他の展示物は端折ってでも、混雑する前にまず会場中ほどに展示されている鑑真和上坐像と静かに対面することをお奨めします。
その他には、現在進行中の唐招提寺金堂平成の大修理の徹底ぶりに驚かされました。
何しろ、いったん建物を完全に解体して、組み直すというのですから。
そこから持ってこられた建立当時の瓦が展示されていましたが、まさに天平の甍。
とても複雑な風合いを醸していました。
最後に、常設展に寄ることも忘れずに!
何といっても注目は「漢委奴国王」の金印。
(古田武彦説では「漢の委奴(ゐど)の国王」と読む。)
黒田節のエピソードにも登場する名槍「日本号」。
8月26日までは黒田長政の重要文化財「黒漆塗桃形大水牛脇立兜(前立無)」も展示されています。
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コメント
鑑真和尚って社会の教科書に写真入りで出てくる、あの人ですよね。
イメージ的に黒光りした像を想像するんですが、どうなんでしょうか。
それにしても志を持った人って強いですね。失明までして、普通なら
恐れおののいて諦めるところでしょうから、歴史に名を残す人って
ホント立派です。
あの有名な金印って福岡の博物館にあったんですね。知らなかった・・。
投稿: wanwanmaru | 2007/08/21 16:51
>wanwanmaruさん
鑑真、教科書に出てくるあの人です!
流石に1300年の年月を経て煤けたような外観ではありますが、
リアルな存在感には驚かされます。
最近、博物館の常設展に注目しています。
地域の意外な掘り出し物に遭遇できます。
福岡市博物館のお宝は本物中の本物ですけれど。
投稿: 二つ目草 | 2007/08/21 22:16