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2008/09/07

辰野金吾の足跡を訪ねる 武雄温泉

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竜宮城や『千と千尋の神隠し』の湯屋を思わせる楼門と武雄温泉新館。
日本近代建築の父、辰野金吾が設計した大正4年の建物で、
国の重要文化財に指定されています。

先日、『東京駅の建築家辰野金吾伝』東秀紀著 (講談社 2002年)を読みました。
建築家の立場から見た明治維新の人間ドラマを楽しめます。

唐津藩の下級武士の次男であった金吾が、東京大学工学部建築学科の前身である
工学寮造家学科(当時は建築学という言葉もなかった)を主席で卒業し、ロンドン留学。
帰国後は東京帝国大学工科大学学長、建築学会会長として、
日本銀行本店や中央停車場(現東京駅)など数々の近代建築の設計、後進の指導を行いました。

唐津出身ということもあり、九州にも金吾が設計に関わった建築が多く残っていますが、
ほとんどが、辰野式とも呼ばれた赤煉瓦に白い石の縁取りを施したヴィクトリアン・ゴシック建築です。
武雄温泉のこの建物は、それらとはスタイルが異なるので、ちょっと気になっていました。

武雄温泉の歴史は1200年と古く、神功皇后が半島に出兵した帰りに立ち寄り、
小柄でそばの岩を裂いたところ、湯が湧き出たという伝説から、柄崎温泉と呼ばれていました。
そのようないわれもあることから、秀吉の朝鮮出兵の際にも、負傷兵が名護屋城から湯治に通ったとされます。
また、江戸時代には長崎街道塚崎宿としても賑わい、シーボルトや吉田松陰も入湯しているそうです。

大正になり、武雄温泉株式会社の宮原忠直という人物が、鉄道が開通したのを契機に、
ここに一大温泉リゾート地を作る計画を立て、同じ唐津出身の建築界の大御所辰野金吾に設計を依頼しました。
設計の段階では、金吾得意の煉瓦造りで、楼門も3つあったり、
ビリヤード場、サウナ、演芸舞台などもある複合リゾート施設の構想だったようですが、
建設の段階でいくつかの変更があり今の形になったようです。

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とりあえず、私も元湯のぬる湯(42℃)とあつ湯(45℃)に浸かって朝湯を楽しんだ後、
手を腰に定番のコーヒー牛乳をゴクッとやってから、建物を探索です。

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葉っぱの会の写真も撮りつつ、、、

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新館1階には当時いくつかのクラス分けされた浴室がありました。
伊万里で焼かれたタイルが貼られた八角形の浴室。

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立ち上った湯気は、屋根の中央から抜け、2階の休憩室に湿気がかからないようになっているようです。

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当時の様子を思い浮かべながら、少しうねった「むかしガラス」越しに眺めます。

ではここからは、久々の「ステレオ歴史探訪」シリーズです。
<その18>ということで、平行法で立体視をお楽しみください。

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新館2階廊下。
右手に和室の休憩室が並びます。

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休憩室の窓から、浴室の屋根が見えます。
手前が男湯、奥が女湯。

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中央の部屋からは、廊下の窓越しに楼門が見えます。

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金吾の設計通りにいかず、かなえられなかった夢を残しているような気もする武雄温泉でした。

辰野金吾に関するその他の記事
ステレオ歴史探訪(15) 辰野金吾設計旧百三十銀行八幡支店
夏唐津(旧唐津銀行)
北九州イノベーション+ナイトツアー・戸畑編(旧松本邸)

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コメント

二つ目さんこんばんは。
辰野金吾特集(前編)興味深く読ませていただきました。
また久しぶりのステレオ写真、楽しませていただきました。
さらにびっくりしたのは、私も偶然東秀紀さんの御本を購入して
これから読もうと思っていたところだったからです。
タイトルは『「明日の田園都市」への誘い』というもので
E.ハワードの同名の書の背景を探ったものです。
実は東氏の「鹿鳴館の肖像」を読みたかったのですが品切れで
街づくりのほうを選んだのです。
なんだかシンクロして面白いです。
後編楽しみにしています。

投稿: 赤か毛 | 2008/09/07 20:44

>赤か毛さん
早速コメントありがとうございます。
私は建築に関しては素人なので、赤か毛さんにはいろいろ教えていただければと思っています。

東秀紀さんも建築家だということなのですが、
『東京駅の建築家辰野金吾伝』は、明治維新の激動期に生きた、
金吾や他の登場人物が大河ドラマのように活き活き描かれていて、一気に読みました。
今読んでいるのが、『鹿鳴館を創った男 お雇い建築家ジョサイア・コンドルの生涯』(畠山けんじ著)で、
金吾の工学寮造家学科時代の先生の話です。
この人も変わってて、浮世絵の奇才河鍋暁斎に弟子入りをして雅号も与えられているのですが。
私も東氏の『鹿鳴館の肖像』、読んでみたいです。
ほんとにシンクロしてますね!

神功皇后ネタもシンクロさせてます(^^)

投稿: 二つ目草 | 2008/09/07 20:59

武雄温泉ですか~。

ここは良質な温泉なんで結構立ち寄ってます。私の場合家族湯に
入ることが多く、ここでも家族湯を利用します。ちょっと高い
けど「殿様の湯」が最高に気に入ってます。

楼門はすっかり武雄温泉の顔になっていますが、建設にあたっては
いろいろあったようですね。知りませんでした。そういう話を知って
見るのはまた違う面白さがありそうです。

ところでオフ会の詳細が決定したようです。詳しくはひでさんの
ブログにGO!。(^^)

投稿: wanwanmaru | 2008/09/08 23:34

今日は。
糸島へ戻りやっとADSLが開通したところです。
上海で建築の写真を撮影していましたので、
こういったお写真には興味が沸きます。
私も建築に関してはまったくの素人でなので、
見た目の興味だけで感心していました。
少し落ち着いたら近くの写真もUPしたいと思いますので、
宜しくお願いします。

投稿: haichaolu | 2008/09/09 12:42

>wanwanmaruさん
たしかにお湯の感じがとてもよかったです。
殿様の湯とは、昔、実際に鍋島の殿様がお入りになっっていたという風呂ですね。
ゴージャスでしたか?今度は、それに入ってみよう。
楼門は、関門でいうと赤間神宮にも似ていますよね。

オフ会には今のところ参加できそうです。
楽しみですね。

>haichaoluさん
もう糸島に戻られていたのですね。
上海の新旧の建築も魅力的で、写真を楽しませていただいていましたが、
糸島も、まだ一度しか行ったことがありませんが、またぜひ行きたいと思っている興味深い場所です。
近々糸島クラフトフェスというイベントも行われるようですね。
写真や記事を楽しみにしています。

投稿: 二つ目草 | 2008/09/09 21:39

FUJIFILMが、裸眼立体視ができる3Dデジタルカメラを発売するそうです。
http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0809/24/news100.html

楽しみですね。

投稿: でぱいゆ | 2008/09/24 22:38

>でぱいゆさん
ついにステレオ写真専用デジカメが登場ですね。
注目は、これに対応する3Dプリントシステムが整備される予定ということ。
ラボで裸眼立体視をしなくてもよい3Dカードがプリントを作ってくれるようです。
このカメラの3D映像のファイルは独自形式ということですが、
今使っているStereoPhoto Makerなどのステレオ写真作成ソフトが
この形式の出力に対応するようになって、
3Dプリントシステムのラボに出せるようになるとうれしいです。

投稿: 二つ目草 | 2008/09/24 23:57

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