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2009/05/26

再び『聖地チベット』展へ

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九州国立博物館の『聖地チベット』展、再び行ってきました。
「父母仏立像」が大きく新聞に取り上げられたばかりなので、
きっと混雑するだろうとちょっと早めに出たら、開場30分前に着いてしまいました。

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5月20日の朝日新聞夕刊に掲載されたのは「カーラチャクラ父母仏立像」。
その日の午後から、上のような検索ワードで当ブログに多くの来訪がありました。
日本の穏やかなものとはまったく異なった、情熱的で活力みなぎる仏像への関心の高さがうかがわれます。

前回の観覧では、躍動的で、ときにエロティック、ときにおどろおどろしい仏像たちに驚きましたが、
「チベット」や「密教」にもっていたイメージとのつながりがどうしても理解できませんでした。
そこで今回は、ちくま学芸文庫『増補 チベット密教』(著:ツルティム・ケサン、正木晃)を読んで臨みました。
この本は、チベット密教の歴史や修行についてかなり詳しく、またよく整理されて書かれていて、
相当に難解な部分もありますが非常に参考になりました。
修行の具体的な方法には、父母仏を初めて観た時の衝撃以上にショックを受けましたが、
それらの意味もしっかり解説されています。
博物館の展示やブログの記事の限られた文章の中で、この性的な行為さえ取り入れた修行について表すのは、
誤解を受けてしまう恐れがあるので、ここは書物でじっくりと読んで知っていただくのがよいでしょう。
ちなみに増補というのは、以前に出された新書版に加筆されていることを意味しますので、
新書版よりこの文庫版を入手する方がお得です。

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開場まで、心地よい風に吹かれながら、九博の回りの散策です。

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インドの仏教がヒンドゥ教の人気に押されて衰退する中、ヒンドゥの要素も取り込んだインド後期密教が生まれますが、
その後のイスラム勢力の侵攻によって仏教が滅ぼされたインドに代わって、チベットに、この後期密教が根付き発達していきます。
このチャクラサンヴァラ父母仏立像タンカでは、後期密教に特徴的な主尊が明妃を抱いた姿を表していますが、
シヴァ神を踏みつけ、ヒンドゥの創造神の生首をつかんむ様子で、ヒンドゥに対する優位性を示しています。

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今回の私の守りがみは、ヤーマンタカ。
前回ウルトラセブンのカプセル怪獣「ミクラス」のスケッチまで載せて話題にしたので、守り神になってくれたのでしょうか。
この水牛の顔を持った怒れる姿はヒンドゥの要素を、今度は肯定的に取り入れています。
強力な呪殺の本尊ともされるヤーマンタカには、おどろおどろしい暗黒面を見るような恐ろしさもありますが、
本態は文殊菩薩で、てっぺんの頭はその穏やかな慈悲の姿を見せます。

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ヤーマンタカを守りがみ(守護神)としていたのがゲルク派の開祖ツォンカパ。
前述の『増補 チベット密教』ではツォンカパの生涯に、多くのページが割かれていますが、
顕教(大乗仏教)と密教を統合し、整理大成させました。
後にモンゴル勢力の後ろ盾を得て、政治的な力をもったこのゲルク派が、現在のダライラマの系譜になります。



大きな地図で見る

チベットの地図を見ると、黄河、揚子江、インダス川、ガンジス川、メコン川など、アジアの代表的な大河がここから流れて行きます。
今回の2度目の観覧では、インド、元、明、清など他国との厳しい関係の中で、対立と融和を繰り返しながら、
チベット密教は生き残り、磨かれてきたことを感じました。

九州国立博物館での福岡展は2009年6月14日まで。急ぎましょう!

この後、
札幌展 北海道立近代美術館 7月11日-8月23日
東京展 上野の森美術館 9月19日-2010年1月11日
大阪展 大阪歴史博物館 1月23日-3月29日
仙台展 仙台市博物館 4月20日-5月30日
と、全国を回るそうです。

九州国立博物館第10回ぶろぐるぽに参加しています。

展覧会場内の写真は、九州国立博物館よりご提供いただいたものです。



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コメント

二つ目草さん、こんばんわ!
こんなに官能的で解りづらいもの、1度では理解できないな~と思っています。
これはまたゆっくりと見なきゃ・・ですね。
 
私も本から入るタイプで、気になると本を開いてしまいます。
でも今回の、魅力的ながら解りにくい仏像さまたちを理解するには、本を紐解くしかないですね。

来月は少し時間ができそうなので、またゆっくりと会いに行きたいと思っています。

投稿: いでさつ | 2009/05/26 21:15

>いでさつさん
2度目に観に行くと、あれこの仏像ってこんなに小さかったっけ?
というのが、けっこうありました。
それだけ、最初のインパクトが強かったということですね。
音声ガイドも今回は借りず、自分の気分の赴くまま、見たいものを見て回りました。
チベットの掛け軸であるタンガの数々や、金とトルコ石で飾られた法螺貝など、新たな魅力の発見もありました。

そして、いつかはチベットに行ってみたくなりました。

投稿: 二つ目草 | 2009/05/27 00:12

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