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2009/07/26

大盛況、九州国立博物館『阿修羅展』

Ashura01

九博に、ついに話題の阿修羅が。
ということで、先日の海の日に夫婦で興福寺創建1300年記念国宝阿修羅展に行ってきました。
ちなみに、当ブログ400記事記念のエントリーになります。

私の阿修羅像との出会いは、おそらく小学生の頃、私の切手コレクションに入っていた
1968年発行の15円切手ではないかと思います。
細い体から四方に伸ばした細長い腕を、蜘蛛のようだと感じたのが第一印象だったような。
それから「阿修羅」と聞けば、1979年に放映された向田邦子脚本のNHKドラマ『阿修羅のごとく』 で
バックに流れていたオスマントルコ陸軍行進曲が、自然と頭の中に流れ出します。

ここまでの大ブームは、ちょっと憂いをもった美少年という姿が受けているのでしょうか。
何しろKBCラジオでも、まるで道路交通情報のように阿修羅展待ち時間情報が流されているほど。
覚悟はしていましたが、11時頃九博に到着すると、待ち時間40分。
入場口前に設置されたテントの下で待ち、さらにエントランスでも待ち、ようやく入場。
もし入場制限がなければ、場内が身動き取れなくなりそうなので、仕方ありません。
実際、それでも阿修羅像の周囲は人だかりがなかなか動かず、
係員が度々「せーの」と号令して、どうにか少しずつ回転するという前代未聞の状況で、
仏像と静かに対面するという雰囲気ではありませんでした。

Ashura02

1300年前に興福寺が造られた時、極楽浄土を再現するために28体の仏像が配されたそうですが、
阿修羅像は、その中でも、脇役の脇役、仏法を守護する八部衆の一員に過ぎませんでした。
しかもこの像は、戦いの神である阿修羅にしては、華奢で穏やかな少年の姿として表されています。
にもかかわらず、圧倒される存在感はどこから来るのでしょう。

何度もの火災をくぐり抜け1300年近く残っていたのが信じられない、か細い腕。
しかし、その6本の腕の仕草からは、宇宙の大きささえ感じてしまいます。
粘土の塑像の上に麻布を張って漆で固めた後、内部の粘土を取り除くという脱活乾漆造り。
その軽くて(身長153.4cm、体重14.85kg!)、丈夫な構造ゆえに、
度重なる大火からも無事に持ち出され避難できたわけですが、
深みのあるリアルな表情は、同じ時期に同じ方法で造られた国宝鑑真和上坐像を
2年前に福岡市博物館で観た
際にも感じられました。

阿修羅以外の八部衆像も、非常にユニークで面白い神様たち。
鳥の顔をした迦楼羅(かるら)は、インド神話では「ガルーダ」と呼ばれますが、
「ガルーダ・インドネシア航空」という航空会社もありますね。

Kendatuba

頭に獅子の冠をかぶり、目を閉じた乾闥婆(けんだつば)は、
着ぐるみを着た子どものようで、かわいいので、勝手に色を着けてみました。

実際これらの仏像は、建立当時はとても派手に着色されていたようで、
阿修羅像の着色された姿は、4階の展示室で観ることができます。
最近ちょうど、『日本の国宝、最初はこんな色だった』小林泰三著 光文館新書を読んだところでしたが、
本来の姿を当時の人が観て感じるものと、
風雪を経た今の姿をわれわれが観て感じるものとでは、かなり差がありそうです。

愛用の近距離対応双眼鏡PENTAX Papilio6.5x21は、今回はとくに役に立ち、
人波の間から阿修羅像のご尊顔を間近に拝し、目元、口元の表現に感嘆したほか、
仏像の表面にわずかに残された塗装の細かな文様を観察できました。

東京展では八部衆全員集合だったようですが、九州展では3体が展示されなかったのが残念です。

Ashura03

天平期から残るオリジナル作品群を細マッチョ美少年系とすると、
鎌倉期に再興された際、運慶の父、康慶によって作られた四天王像はゴリマッチョガテン系。
目を剥いた表情、餓鬼を踏みつける仕草には、力強さがみなぎっています。
しかし、木造の像に施された彫刻はかなり繊細で、
衣装の金具や布革の質感の違いも彫り分けているようでした。

Ashura04

再興されたにもかかわらず、再びの大火の際、
頭部と手だけが救い出された本尊の釈迦如来像は運慶作とされます。
天平期の脱活乾漆造りのリアルな顔に比べると、
仏の慈悲をシンボライズしたような印象があります。

Ashura05

小学生の次女が、学校から阿修羅新聞という分かりやすい子供向けのチラシをもらってきましたが、
場内にも、4コマ漫画風のイラストで描かれた解説が展示されていました。
内容はよかったのですが、四角柱を1周する形での閲覧は、
混んでいる会場では、さらに流れを悪くしていました。
出口のところに、これらをまとめて一覧できるパネルが展示されていて、
そちらでゆっくり読むことができます。

九州国立博物館第11回ぶろぐるぽに参加しています。

展覧会場内の写真は、九州国立博物館よりご提供いただいたものです。

Sakurakan

名作に対面できた阿修羅展でしたが、大変な人混みに疲れてしまいましたので、
天満宮の参道の混雑を避け、脇道にある「cafe さくら館」という喫茶店で一休み。
食事のメニューは自家製カレーのみでしたが、美味しく平らげ、
テーブルごとに異なるインテリアと壁のギャラリーを眺め、くつろぎました。

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コメント

二つ目草さん、こんにちは
さっそく行ってこられたんですね!
文面から、やはりすごい人なのだな~と、推測され・・
少々、悩んでおります。(南側駐車場も閉鎖されているし…です)
 
人の波と、待ち時間あり…
多動の息子には少々無理があるでしょうか…
え~い!朝早く行ってしまえ~!
でしょうか。

投稿: いでさつ | 2009/08/04 09:56

>いでさつさん
東京の時にも大混雑だったと話題の展覧会だけに、恐る恐る出かけました。
休日で40分待ちはまだましだったようです。
1300年の歴史に比べれば、40分の待ち時間などどうと言うことないと思わせる阿修羅像でした。

通常は私も朝一を狙うのですが、今回は多い日だと開場までにかなり観客が溜まっているかも。
他の人のレポートなどをみると、平日の午後などが比較的余裕があるようですね。
展示品目は少な目なので、混雑の割にはじっくり鑑賞できますよ。

投稿: 二つ目草 | 2009/08/04 22:29

なるほど・・ですね~
ちょうど夏休み中で、時間は余るほどあり^^;
平日の昼間、挑戦してみます!

投稿: いでさつ | 2009/08/05 09:55

九博のサイト http://www.kyuhaku.jp/index.html
ケータイで待ち時間を検索できるQRコードがありました。
朝日新聞のサイトhttp://m.asahi.com/go/ashura にとぶようです。
(*パソコンからは確認できません)

では、いってらっしゃい(^^)

投稿: 二つ目草 | 2009/08/05 21:59

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